地球温暖化や環境破壊が深刻化する中、食生活の選択が環境にどれほど影響を与えるかが注目されています。
私たちが日々摂取する食品の生産と消費は、「炭素排出量(カーボンフットプリント)」「水の使用量(水フットプリント)」「土地利用の効率」といった観点で環境に大きなインパクトを与えています。
そんな中で「地中海式ダイエット(MD)」は健康的でありながら、持続可能な選択としても注目されています。
本記事では、地中海式ダイエットがどのようにして環境に配慮されているのか、その実態を解説していきます。
この記事は、「こちらの論文」の内容を参考に作成しました。
地中海式ダイエットとは
地中海式ダイエットとは、地中海沿岸の地域で伝統的に続けられてきた食生活をベースにした健康的な食事法です。
新鮮な野菜や果物、全粒穀物、豆類、ナッツ、そしてオリーブオイルを豊富に摂取することが特徴で、動物性食品は控えめにしながら、魚や乳製品(主にチーズやヨーグルト)、鶏肉を適量取り入れています。
また、食事だけでなく、家族や友人と食事を楽しむ「共食」や、ゆっくりと味わうこと、日常的な運動を含むライフスタイルとしても評価されており、心身の健康を支える生活習慣の一部としても大切にされています。
高タンパク低カロリーな魚を適量摂取することで、筋肉量の低下を防ぎ、代謝を維持しやすくなるため、太りにくく痩せやすい体作りにもつながるんだ。
環境フットプリント分析
地中海式ダイエットは、健康だけでなく、環境にも優しい食事法とされています。
その理由を、環境フットプリントという観点から見ていきましょう。
主に以下の3つのポイントで評価されます。
- 温室効果ガス排出量(GHGE)
- 水資源の使用量(WF)
- 土地利用(LU)
環境フットプリントとは、食生活がどれだけ地球に負担をかけるかを示す指標だよ。
温室効果ガス排出量(GHGE)
地中海式ダイエットは、温室効果ガスの排出が少ないとされています。
これは、肉の消費が少ないため、畜産業による温室効果ガス(CO2など)の排出が抑えられるからです。
肉を減らすことで、地球温暖化の原因となるガスの排出を少なくすることができます。
水資源の使用量(WF)
地中海式ダイエットは、水の使用量も比較的少ないとされています。
植物ベースの食事が多いため、水の消費が少ないからです。
ただし、南欧など乾燥した地域では水の消費が多くなることがあり、例えば特定の作物が多くの水を必要とする場合があります。
つまり、地域ごとの気候によって、水の使用量は異なるという点も大切です。
土地利用(LU)
地中海式ダイエットは、植物中心の食事が多いため、土地を効率的に使えるとされています。
動物飼料のために広い土地を使わなくても済み、より多くの食材を効率よく生産することができるんです。
このため、土地利用の面でも、地球に優しい食生活と言えます。
魚の消費についての課題
地中海式ダイエットでは、健康に良いとされる魚の摂取が推奨されていますが、その一方で環境への負担も指摘されています。
特に、大型魚(マグロ、サーモン、カジキなど)には以下のような環境への影響が懸念されています:
- 食物連鎖の上位に位置し、大量のエサを必要とするため、漁獲が進むと生態系全体への影響が大きくなる。
- 需要が高いため、過剰に漁獲されやすく、自然環境に大きな負担をかける。
- 成長に時間がかかるため、捕りすぎると数が減り、絶滅のリスクが高まる。
そこで、地中海式ダイエットの持続可能性を保つためには、小型魚(アンチョビやイワシなど)や、持続可能な養殖で育てられた魚を取り入れることが推奨されています。
小型魚は成長が早く、数も多いため、過剰な漁獲によるリスクが少なく、自然環境への負荷を軽減できると言われています。
つまり、大型魚の消費を控え、小型魚や持続可能な養殖魚を選ぶことで、環境にも配慮した地中海式ダイエットを実践できるということです。
こうすることで、健康面と環境面の両方に優しい食生活が実現できるのです。
アンチョビやイワシなどの小型魚は、タンパク質やオメガ-3脂肪酸が豊富で、体に必要な栄養をしっかりと補えるんだ。
持続可能性における課題と改善案
地中海式ダイエットは「環境に優しい食生活」として評価されていますが、その持続可能性を正確に測るには、いくつかの課題が残っています。
具体的には、評価の方法や基準が統一されていないことが大きな問題です。
同じ野菜でも、育つ地域や栽培方法によって環境への影響が変わります。
例えば、以下のようなケースがあります:
- 雨の多い地域では、自然の雨水だけで育てられるため、水の消費が少なくて済む。
- 地中海の乾燥地帯で育てる野菜は、灌漑が必要で水の消費量が多くなる。
こうした地域や育て方の違いも含めたデータが必要なんです。
さらに、「持続可能な食生活とは何か?」という定義や基準もまだ統一されていません。
例えば、食生活の持続可能性を評価する際の基準には、以下のような違いがあります:
- 温室効果ガスの排出量だけで評価する場合
- 水の使用量や土地の使用効率も含めて評価する場合
こうした基準の違いがあるため、一貫した評価方法が求められています。
地中海式ダイエットは環境に良いと言われていますが、どこまで正確にそう言えるかは課題が残っており、一貫した点数をつけるのが難しいんだ。
まとめ
地中海式ダイエットは、健康にも環境にも配慮した持続可能な選択肢として、広く注目されています。
慢性疾患の予防や健康寿命の延伸に役立つだけでなく、温室効果ガスの削減にもつながる点で、多くの人に支持されています。
ヨーロッパでは、一部の国がこのダイエットを推進し、持続可能な食材選びや、ゆっくり食事を楽しむライフスタイルを提案しています。
こうした食生活を取り入れることで、私たち一人ひとりが環境保護に貢献できる可能性が広がっているのです。
環境のことを考えながら、体にも優しい食生活を取り入れるという選択が、これからもっと身近になっていくといいですね。
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